人種主義、ファナティズム、民主主義への敵意――ますます分極化する社会で、集団的な憎しみが高まっている。なぜ憎しみを公然と言うことが、普通のことになったのだろう。
多くの難民を受け入れてきたドイツでも、それは例外ではない。2016年には、難民の乗ったバスを群集が取り囲んで罵声を浴びせ、立ち往生させる事件が起こった。それまでのドイツではありえなかったこの事件は、社会に潜む亀裂をあらわにした。
自分たちの「基準」にあてはまらない、立場の弱い者への嫌悪、そうした者たちを攻撃してもかまわないという了解。この憎しみの奔流に飲み込まれないためには、どうしたらいいだろう。
憎しみは、何もないところからは生まれない。いま大切なのは、憎しみの歴史に新たなページを加えることではなく、基準から外れたとしても幸せに生きていく可能性をつくることではないだろうか。
著者カロリン・エムケはドイツのジャーナリスト。自分とは「違う」存在を作りだして攻撃するという、世界的に蔓延する感情にまっすぐに向き合った本書は、危機に揺れるドイツでベストセラーになった。いまの世界を読むための必読書。
目次
はじめに
1 可視‐不可視
恋
希望
懸念
憎しみと蔑視
1 特定の集団に対する非人間的行為(クラウスニッツ)
憎しみと蔑視
2 組織的人種差別(スタテンアイランド)
2 均一‐自然‐純粋
均一
根源的/自然
純粋
3 不純なものへの賛歌
原註
訳者あとがき
カロリン・エムケ (カロリン エムケ) (著/文)
ジャーナリスト。1967年生まれ。ロンドン、フランクフルト、ハーヴァードの各大学にて哲学、政治、歴史を専攻。哲学博士。『シュピーゲル』『ツァイト』の記者として、世界各地の紛争地を取材。2014年よりフリージャーナリストとして多方面で活躍。著書に『Stumme Gewalt(もの言わぬ暴力)』『Wie wir begehren(わたしたちの欲望のあり方)』『Weil es sagbar ist(なぜならそれは言葉にできるから)』『Gegen den Hass(憎しみに抗って〔浅井晶子訳、みすず書房〕)』ほか多数。『メディウム・マガジン』にて2010年年間最優秀ジャーナリストに選ばれたほか、レッシング賞(2015年)、ドイツ図書流通連盟平和賞(2016年)をはじめ受賞多数。
浅井晶子 (アサイショウコ) (翻訳)
翻訳家。1973年生まれ。京都大学大学院博士課程単位認定退学。訳書に、イリヤ・トロヤノフ『世界収集家』、パスカル・メルシエ『リスボンへの夜行列車』(以上早川書房)、ステン・ナドルニー『緩慢の発見』、サーシャ・スタニシチ『兵士はどうやってグラモフォンを修理するか』(以上白水社)、カロリン・エムケ『憎しみに抗って』(みすず書房)ほか多数。
みすず書房
2018年
四六判 216P