ハンガリーの現代詩はすべて
夭折の詩人ヨージェフ・アティッラから生まれた――
その詩と生涯を一冊で味わう邦訳オリジナル
久しく、ぼくは孤独だった。
それから、仲間がやってきた。
きみは一人だ、彼らは言った、
友のままでいたかったのに――
こうして、虚しく生きてきた、
今、心底、そう思う。
愚かな人生送ってきた、
もう死さえ役には立たぬ。
生まれ落ちると、さらされた、
凍てつく冷たい世間の風に。
人を傷つけたこともある、
だが、はるかに傷つく人生だった。
春は美しく、夏は美しい!
秋はさらに! だが、冬が最も美しい、
死を前にして、見知らぬ者たちに、
暖炉と家族とを願うなら!
(此処に、おお、わが終の住処を得たり……)より
ヨージェフ・アティッラ [Jozsef Attila] (1905~1937)
ハンガリーの首都ブタペストの貧しい労働者の家庭に生まれる。三歳で父が失踪、十四歳で母に先立たれ孤児となる。養父の援助でギムナジウムを経てセゲド大学の哲学科に進むが、既成の倫理に挑戦する詩を書いて大学を追われる。ウイーン、パリと放浪し、フランソワ・ヴィヨンに感銘を受ける。帰国後労働運動に関わりつつ、新しい時代の詩を求め、ハンガリー詩の伝統に革新をもたらす作品を発表。だが貧困と孤独の中で精神を病み、三十二歳の若さで自ら命を断った。困難な幼年時代から悲劇的な最後を遂げるまで、不運と試練に満ちた暗澹たる人生であったが、内なる苦悩を悪魔払いするかのように想像力の空間で浄化し、言葉の魔術によって美しい作品に変容させた。ハンガリー現代詩の先駆者。ヴィヨンの詩精神を二十世紀のハンガリー社会で生きた詩人。
原田清美 [はらだ きよみ]
1948年熊本生まれ。都立大学大学院仏文科修士課程修了。1978~80年、ブザンソン大学留学。2001年、ハンガリー政府奨学金を得て、ELTE(ブタペスト大学)留学。現在、城西大学講師。
訳書『黄金のブタペスト』(共訳、未知谷)
アディ・エンドレ『新詩集』(未知谷)
<以上、版元サイトより引用>
未知谷
2015年
四六判上製 256P