子どもは言葉を覚えるときに、それ以前の赤ちゃん語を忘れる。そのように、言葉はいつも「消えてしまった言葉のエコー」である。そして、忘れることは創造の源でもある。
言語の中にはつねにもうひとつの言語の影があり、失われた言語が響いている。言語の崩壊過程に言語の本質をみたヤコブソン、失語症を考察したフロイト、複数の言語を生きたカネッティ、死んだのに語る口を描いたポー、母語についてはじめて語ったダンテなどを導きに、忘却が言語の本来もつ運動性であることが浮上する。
アガンベンの英訳者として知られ、30代で本書を著し、恐るべき知性として話題を呼んだ、ヘラー=ローゼンの主著。流離こそが言語の核心であることを明かす、言語哲学の最重要書である。
目次
第一章 喃語の極み
第二章 感嘆詞
第三章 アレフ
第四章 消滅危惧音素
第五章 H & Co.
第六章 流離の地で
第七章 行き止まり
第八章 閾
第九章 地層
第十章 地滑り
第十一章 文献学の星
第十二章 星はまた輝く
第十三章 ニンフの蹄
第十四章 劣った動物
第十五章 アグロソストモグラフィー
第十六章 Hudba
第十七章 分裂音声学
第十八章 アブー・ヌワースの試練
第十九章 船長の教え
第二十章 詩人の楽園
第二十一章 バベルの塔
解説 ダニエル・ヘラー=ローゼンとは何者か?
訳者あとがき
原註
参考文献
索引
ダニエル・ヘラー=ローゼン (ダニエルヘラーローゼン) (著/文)
1974年生。プリンストン大学教授。アガンベンの英訳者として知られる。仏語・伊語・独語・西語・露語、ラテン語・古典ギリシャ語・ヘブライ語・アラビア語に通じ、哲学・文学・歴史学・認知科学・言語学を鮮やかに論じる。著書にEcholalias (2005), The Inner Touch (2007), The Enemy of All (2009), The Fifth Hammer (2011), Dark Tongues (2013), No One’s Ways (2017) がある。
関口涼子 (セキグチリョウコ) (翻訳)
1970年生まれ。日本語とフランス語で著作活動を行なう詩人。詩集に『カシオペア・ペカ』『(com)position』『発光性diapositive』『二つの市場、ふたたび』『熱帯植物園』『グラナダ詩篇』(以上、書肆山田)『Calque』(P.O.L.)『Apparition』(Les Cahiers de la Seine)『Le monde est rond』(Creaphis)『Heriotropes』(P.O.L.)『Adagio ma non troppo』(Le Bleu du ciel)など。エッセイに吉増剛造との共著『機――ともに震える言葉』(書肆山田)。『陰影礼賛』の仏訳者としても知られる。訳書にエシュノーズ『ラヴェル』、ラヒーミー『灰と土』『悲しみを聴く石』、シャモワゾー『素晴らしきソリボ』、ヘラー=ローゼン『エコラリアス』ほか。
上記内容は本書刊行時のものです。
みすず書房
2018年
四六判 336P