民主主義(デモクラシー)って、
疲れませんか?
わかってるようで、わかってないこと
残された時間、
この「世界」と
「私たち」のつながりについて
考えつづけた53歳の法哲学者。
その思索の到達点を示す
最後の連続セミナー
那須耕介さんは、20年前、私ども編集グループSUREが出版活動を始める当初から、行動をともにしてきた法哲学者です。1967年生まれ、京都育ち。21歳の京大生時代に、哲学者の鶴見俊輔さんに見出されて雑誌「思想の科学」に登場して以来、若い世代の書き手として、地元の読者サークルなどの集まりに意欲的に加わってきた人でもありました。
法哲学者としての那須さんの仕事ぶりを見るなら、大学の「研究室」よりも、むしろ町かどに出て、共感を覚える人たちとの直接の付き合いを大事にして、そこを現場とする学風でした。教師としては、学生たちとの「対話」の中から、新たな問題の糸口と発展の道筋を見いだしていこうとしていたようです。穏やかで明朗な語り口の持ち主でしたが、こうした学問の「方法」には、頑固なほどの一途さも伴っていたように思われます。 期待と注目を負う身でありながら、那須さんは、自著を単独で書き上げることには、不思議とあまり関心を示しませんでした。それに代えて、好んで選んだ表現方法は、口頭での発表を、参加者との質疑や議論も含む形で記録し、著作として展開していくというものでした。議論を開かれた形でとどめ置くスタイルに、自身の「学問」観にかなったものを見出すところがあったのでしょう。
今年2021年の春、私どもは、那須さんが「法哲学」を通して考えてきたことの集大成をなすような1冊の本をまとめたいので、連続講義を行なってもらえないかと提案しました。那須さんは、しばしの熟考を経て、これまで大事に作ってきた講義ノートをもとに、3つのテーマを選んで連続講義を行なうことにしようと、決心を伝えてくれました。それが本書『社会と自分のあいだの難関』に収録する「自由な表現」「正義」「法」をめぐる3つの論考です。那須さんの要望で、歴史学者の藤原辰史さんにも加わっていただき(第2講・第3講)、作家の黒川創が司会をつとめました。
連続講義は、今年5月末から7月末まで3回にわたって開かれました。このとき、すでに那須さんは末期の膵がんを患っていましたが、慎重な準備を経て、すべての講義が行われました。そののち、9月7日、那須さんは逝去されました。
本書、那須耕介『社会と自分のあいだの難関』は、著者が生涯の力を尽くした代表的論考をなすものです。これまでの著作と同様、どなたにもわかりやすい平明な言葉づかいで語られています。ひとりでも多くの読者にお読みいただければと願っております。ゆかりのみなさまの予約お申し込みをお願いする次第です。
本書のおもな内容
第1講 傷つける言葉、自由な表現 「開かれた社会」とその疲れをめぐって
第2講 過渡期にある社会を生きる 取り返しのつかないこと、いなかったことにできない人たち
第3講「おかしな法」とのつきあいかた 遵法責務/市民的不服従と民主制
那須耕介さんのこと 黒川創
著者略歴
那須 耕介(なす こうすけ)
1967年生まれ、京都市に育つ。京都大学法学部卒業、2001年京都大学大学院博士課程修了。博士(法学)。摂南大学准教授を経て、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。 著書に『多様性に立つ憲法へ』、『バーリンという名の思想史家がいた』、『ある女性の生き方──茅辺かのうをめぐって』(いずれも、編集グループSURE)ほか。 2021年9月7日、膵がんのため死去。53歳。
<以上、画像・テキストともに版元インフォより>
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編集グループSURE
2021年
四六判並 288P