“ケアに満ちた民主主義”を訴えてきたフェミニスト政治学者トロントの主著を邦訳。ケアの倫理を踏まえた社会への変革を提起する。
これまでの民主主義論が前提する自立/自律したリベラルな個人像を批判し、誰もが「他者に依存せざるをえない存在」という人間観の下での社会構想を訴えるとともに、「ケア」を周縁に封じ込めてきたその政治性や権力性を問う。民主主義の定義を「ケア責任の配分に関わるもの」とし、ケアの倫理を踏まえた社会への変革を提起する。
目次
日本語版読者の方々へ
はじめに
謝 辞
序 章 ケアがもはや「くつろぎの場」にはないとき
民主主義的なケア革命の必要性
ケアをより民主的に考える方法――よりケアに満ちた方法で民主主義を考える方法
第Ⅰ部 ケアリング・デモクラシーの構想
第1章 民主主義の再定義――ケア責任論争の解決へ向けて
ふたつの不足の物語
ケアとケアリングの意味
概念としてのケアから政治理論としてのケア
ケアと民主主義の政治理論
フェミニスト的なケアの民主的倫理
民主的なケアと新自由主義
結語
第2章 なぜ自己責任は民主主義にとって不十分なのか
なぜ責任に焦点を当てるのか
政治的な考えとしての責任
責任と権力
無責任マシーン?
ケアリング・デモクラシーの視点から責任を再考する
民主主義への責任
第Ⅱ部 いま私たちはいかにケアしているか
第3章 タフな男はケアしない、のか?――ジェンダー、自由、ケア
ジェンダー化された責任
なぜケアは女子向きなのか? なぜタフな男はケアしないのか?
男性によるケア1――保護パス
暴力――ケアとしての保護のダークサイド
男性によるケア2――生産パス
職業倫理とケア倫理
新自由主義、競争、自由
自由
シティズンシップのジェンダーを変革すること
結語
第4章 私事化されたケアの悪循環――ケア、平等、民主主義
ケアの不均衡
不平等なケアの社会心理
ジェンダー、階級、ケアのエコロジー
平等の意味を再考する
ケアの不平等と使用人であること
第5章 市場はケアすることができるのか?――市場、ケア、正義
ケア制度のひとつとしての市場
教育の市場化
結語
第Ⅲ部 民主的ケア実践とケアリング・デモクラシーを想像する
第6章 民主的にケアすること
ケアすることが民主的ならば、包摂的でなくてはならない
包摂的であるためには、自己をケアの受け手として再考することが必要である
民主的ケア実践
民主的にケアすることに関する考慮事項
民主的にケアすることは、よりよくケアすることである
民主的ケア制度
民主的にケアするための時間
民主的ケアをそれ自体で引きあげる
第7章 ケアリング・デモクラシー
パスを回収する
ケアリング・デモクラシーにおける市民は何をするのか?
結語
原注
監訳者解説
参考文献
人名索引
事項索引
<以上、版元サイトより引用>
勁草書房
2024年3月