心より水にしたしい手をもつて水に紛れる心を掬ふ
金田さんは本質的にこういう浮遊するような感覚を持つひとである。その感覚がこうして歌のかたちに定着できたことはふしぎかもしれない。存在感をつかめない感覚を平明なタッチで掬いあげている。・・・花山多佳子「栞」より
昼空のなかほどに浮かぶ月が今日漂着物のやうなしづけさ
金田さんが細大に見つめる空への眼差しを存分に分かち合いたい。歌集を通して示唆してくれている、それが何か、を細心に感知しなければならないと思う。・・・小林久美子「栞」より
浜松出身の一人の歌人の誕生。令和四年四月、金田光世さんが第十二回「塔短歌会賞」を受賞された時の感想である。・・・後藤悦良「栞」より
握りの烏賊にわさびの透けて未だ知らぬよろこびのある春の近づく
感情を表す言葉はそもそも極めて抽象的である。これを具体的に「触れる」ものにするのが詩歌の作用である。読者が、そこに描かれた感情をありありと身の内に再現することができる具体性を得ている。・・・澤村斉美「栞」より
<以上、版元サイトより引用>
青磁社
2024年4月
四六判変型上製 204P