被災地を考えるうえでも示唆的な空間、〈第三風景〉とはどこにあるのか? それは、人間が放棄した場所であり、人間が出入りを禁じた場所、そして人間が踏み入ったことのない場所のこと。そこが生物多様性のための避難所となる――。
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『動いている庭』(みすず書房)などで、環境論/風景論/庭園論に新たなページを刻んだジル・クレマン(1943- )が、生物の多様性のための空間設計の指標として執筆し、世界各国で参照されている、実践のためのマニフェスト。
*人間の支配の及ばない放棄地などに生物多様性の可能性をみる本書は、三方が化粧断ちされておらず「地」(頁の下部)が袋状に綴じられたままです。お手数ですが、充分に気をつけて、ペーパーナイフなどでカットしながらお読みください。コツは最初に地袋の部分をすべてカットすることです。ぜひ思い思いの仕上がりをお楽しみください(初版1000部のみ。重版以降は通常の造本・体裁となります)。
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目次
定義
I 起源
II 範囲
III 性格
IV 地位
V 争点
VI 流動性
VII 進化
VIII 尺度
IX 図示と限界
X 時間との関係
XI 社会との関係
XII 文化との関係
宣言
第三風景概念の展開と実行
原注
訳者あとがき
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前書きなど
《クレマンは、一方では人間の移動の激化と人口増加とが、人間をふくむ生物の暮らす環境の悪化につながっていることを指摘しつつ、他方で、その人間の移動と連動するかたちで動植物が拡散し、勝手に別の地域に定着することを否定しない。(……)生命がつねに動きとともにあることを肯定し、自由を重んじるこのクレマンの立場は、「外来種」を敵視するような自然保護活動と一線を画す。「自然を守ろう」が保守的、ひいては排外的思考に結びつく場面が散見される日本の状況に対しても、彼の理路はひとつの示唆をあたえてくれるのではないだろうか。》
――笠間直穂子「訳者あとがき」より
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ジル・クレマン (ジル クレマン) (著)
1943年、フランス中部アルジャントン゠シュル゠クルーズに生まれる。庭師、修景家、植物学者、昆虫学者。ヴェルサイユ国立高等修景学校名誉教授。アンドレ゠シトロエン公園(パリ)、マティス公園(リール)などの大規模プロジェクトに参加、教育・研究に長年従事する。
著書に、『動いている庭』(みすず書房、2015)など多数があるほか、2015年の来日時の記録として、『ジル・クレマン連続講演会録 庭師と旅人――「動いている庭」から「第三風景」へ』(エマニュエル・マレス編、あいり出版、2021)がある。
笠間 直穂子 (カサマ ナオコ) (訳)
1972年、宮崎県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。現在、国学院大学文学部教授。フランス語近現代文学研究、仏日文芸翻訳。
著書に、『鳥たちのフランス文学』(共著、幻戯書房、2024)ほか、訳書に、ジャン・フランソワ・ビレテール『北京での出会い もうひとりのオーレリア』(みすず書房、2022)、C・F・ラミュ『詩人の訪れ 他三篇』(幻戯書房、2022)、マリー・ンディアイ『心ふさがれて』(インスクリプト、第15回日仏翻訳文学賞、2008)など多数がある。
共和国
2024年9月9日
四六変形判 H190×W118mm 168P 並製